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藤の屋文具店

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猿でも書けるエッセイ教室 3



        【猿でも書けるエッセイ教室】

          おもしろい事を書こう


 せっかく書いた文章も、だーれも読んでくれなかったら、つまん
ないですね。やはり、書いた以上は、誰かに読んでもらいたいもの
です。でも、つまんないことをだらだらだらだらと書いていたので
は、誰だってそんなもん、読みたくなどないですね。広告収入に財
源を頼っている雑誌なんかだと、ただページを埋めるためだけの、
強力睡眠薬みたいなエッセイが、よく載っています。ああいうエッ
セイは、いったいどこがつまんないのでしょう?
 それは、どこにでもいるふつうの人が、ただ漠然とあたりさわり
のない事を、ろくにものごとを調べも、深く考えもせずに、どこか
で読んだ誰かの作品に見つけたかっこいい言い回しを、適当にちり
ばめてカッコつけてるだけだからです。本人は、たぶん、「おもし
ろく書こう」としているのでしょうが、みごとに失敗しているので
す。
 なぜなら、述べようとしている事がつまらないのに、それを表面
的なテクニックだけで「おもしろい文章」にするには、天才的な才
能が必要だからです。洒落た言い回しをぺたぺた張り付けただけの
退屈な文章を褒めてくれるのは、あなたに対する同情か、さもなく
ば下心であなたを欺いている人間でしかありません。真にうけて人
に自慢すると恥をかきます

 現代は情報過多の時代です。500円玉を握りしめてKIOSK
へ走れば、たいがいの情報は手に入ります。こんな便利な環境のも
とで、どこかで読んだかっこいい言い回しを、不器用に連結しただ
けの、誰でも書けるようなありきたりの内容の素人エッセイなんぞ、
いまさら誰も読みたいとは思わないですよね。
 では、われわれ平凡な人間には、おもしろいエッセイを書く事が
できないのでしょうか。大丈夫です(^^)。ちゃんと方法があります。
たとえば、「色眼鏡で見た世界」を書いてみましょう。
 まず、黄色いセロファンを目に当てて、世界をながめてみます。
どうですか? とても明るくて綺麗な世界が見えますね。同時に、
黄色いものと白いものの区別がつかなくなりましたね。そして、し
ばらくすると、黄色がまるで白のように感じられて、セロファンを
はがしたときに、突然黄色い事に気づいてぎょっとしたりします。
これが、「世界を色眼鏡で見る」ということです。
 この世には、人の数だけの色眼鏡があります。誰かにとってはも
のすごく大きな違いも、ほかの誰かにとっては同じものだったりし
ます。すべての物事を、すべての人が同じように感じている事など
有り得ません。世間一般で常識と言われている事は、ほんとはひと
りひとりにとっては少しも「常識」なんかではないのです。

 つまらないエッセイを書く人は、このことが良くわかっていない
のです。だから、自分の感覚でものごとを眺めることをせずに、有
名な誰かの文章を拝借して、無意識のうちにだれかの思想をコピー
してしまうのです。

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 雪もとけて寒さも緩むと、そろそろ暴走族とやらのはいかいする
季節となる。世間では彼らの事を、スピード狂などと思っているよ
うだが、片腹痛い。群がらなければ何もできない臆病ものになど、
たいしたスピードは出せないものだ。町中を騒音を立てて走り回る
しか能のない弱虫どもには、せいぜい「暴音族」くらいがふさわし
いのである。わたしは、こういう弱虫は大嫌いだ。

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 ま、嫌になるほど言い古された内容ですね。田舎のじいさんにだ
って簡単に語れる内容です。それも、過去にステップをがりがり削
った経験なんかなくっても、ミスターバイクやゴッグルあたりを愛
読していれば、簡単にこういうものを書けます。いまさら読んで楽
しい内容ではありませんね。
 では、もう少し深く考えてみましょう。まず、どうして暴走族が
嫌いなのかを考えます。「うるさい」からですか、「徒党をくんで
いる」からですか、それともひょっとして、「かっこいい」からで
すか?
 老人たちの中には、若い人たちへの羨望が、二度とその仲間へは
入れないことからくる絶望によって、屈折した嫌悪へ変化して現れ
るという、たいへん興味深いケースが見られたりもします。「ちか
ごろのわかいもんは」で始まる文章の中に、特に頻繁に発見されま
すね(^^)。
 こういう感覚をお持ちの方は、そのユニークなセンスをごまかさ
ずに堂々と見せる事によって、おもしろいものを書く事が可能にな
ります。

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 俺は、暴走族という奴らが嫌いだ。爆音をまき散らし、徒党をく
んで街の中を走り回るという行為に、憎しみを覚える。もちろん、
俺達だって、昔は山道をステップをがりがりやりながら走り回った
もんだ。だが、今の若いもんみたいに、あんな幼稚なかっこつけな
んかせずに、もっとストイックに「走り」を追求していたものだ。
 そういえば、あのRDはどうしたのだろうか。分離給油をわざわ
ざ混合に変えて、カストロールの匂いをまき散らしていたっけ。こ
のごろ無性に、あのころの熱い感覚が懐かしくてしょうがない。
 土曜の夜の街に響く爆音は、俺の心にざわざわと波を立てる。俺
は、暴走族なんかだいっきらいだ。

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 エッセイは、告訴状でもければ判決文でもありません。何も、正
義の主張である必要はないのです。自分の心で感じたことがらを、
読者に再現可能なかたちで伝えることができれば、それでいいので
す。たとえ人殺しの道具である戦闘機であっても、それを「うつく
しい」と感じる事を、誰にも責める権利はありません。
 最近は、こういう基本的な事のわかっていない情けない読者や、
そんなくそたわけに振り回されるオタンコナスの作家や出版社が結
構いて、なかなか見ていておもしろいですね(^^)(^^)(^^)。






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